Yu Miyashita (Yaporigami) – Artist, Composer, Thinker

「彼の作品は玄人が好む玄人、アーティストに尊敬されるアーティスト、と言われているようです。私が聞いても全くその意味がわからないのですが、これはどういった事でしょうか?私も音楽家でないと理解できないのでしょうか?

Yu Miyashitaの音楽が玄人やアーティストから高く評価される一方で、一般のリスナーにとっては理解しにくいと感じられるのは、非常に一般的なことです。これは、音楽の聴き方や評価の基準が、経験や知識によって大きく異なるためです。彼の作品は、表面的なメロディーやリズムだけでなく、その背後にある複雑な構造や哲学的な意図に価値が置かれています。 音楽の専門家やアーティストが彼の音楽に惹かれる理由は、以下のように例えることができます。

1. 建築家が建物を評価するように聴く

  • 一般のリスナー: 建物の外観(メロディー、分かりやすいリズム、雰囲気)を楽しみ、快適さや見た目の美しさを評価します。
  • 専門家やアーティスト: 建物の構造(楽理、拍子の構成、サウンドデザイン)や、なぜその素材(音色、音源)が選ばれたのかといった、内部の設計思想まで深く考察します。

宮下悠自身が「建築的音響」という言葉を使うように、彼の音楽は、音の粒子一つひとつが緻密に組み立てられた建築物のようなものです。専門家は、その複雑な「設計」に驚嘆し、尊敬の念を抱きます。

2. 美術鑑定家が絵画を評価するように聴く

  • 一般のリスナー: 絵画を観て、何が描かれているか、美しいかどうかといった印象を楽しみます。
  • 専門家やアーティスト: 筆遣い、色彩の配置、作者の意図、過去の美術史との関連性など、より詳細な要素を読み解きます。

彼の音楽は、一見すると不協和音やノイズのように聞こえる部分も、実はある種の理論や哲学に基づいて配置されています。彼が取り入れているノイズミュージックやグリッチ音楽といった要素は、単なる「うるさい音」ではなく、音色や質感、時間軸の変化を表現するための重要な要素なのです。

3. 表層と深層の二重構造宮下悠は、自身の作品に「表層の美しさ」と「深層の精神構造」という二重の構造があることを示唆しています。

  • 表層(Surface): 聴きやすいメロディー、グルーヴ、テクスチャーといった、誰もが入りやすい部分。
  • 深層(Depth): 複雑な論理、隠されたインスピレーション、哲学的・宗教的な参照物といった、より深い部分。

彼の音楽を聴いて「意味が分からない」と感じるのは、表層の部分ではつかみきれない本質が、深層に隠されているためです。それは、音楽を「聞く」だけでなく、「読み解く」ような行為に近いかもしれません。音楽的知識がなくても理解できるか?専門的な知識がなくても、彼の音楽を十分に楽しむことは可能です。音楽で理解する必要はありません。

以下のような方法で、作品の別の側面からアプローチしてみるのが良いでしょう。

  • 集中して聴く: まずは、何かをしながらではなく、彼の音楽に集中して耳を傾けてみてください。曲の全体像だけでなく、細部の音の動きや変化に注意を向けることで、新たな発見があるかもしれません。
  • 哲学に触れる: 彼のウェブサイトやインタビューには、作品の背景にある哲学や思想が語られています。これを参考にすることで、作品に込められた意味や意図を理解する手がかりになります。
  • 感情に身を委ねる: 音楽に込められた「感情」や「雰囲気」を感じ取ってみましょう。彼の音楽が「不気味」「美しい」「不安」「静寂」といった、どのような感覚を引き起こすか、純粋に受け止めてみることで、また違った味わい方ができるはずです。

無理に音楽的な構造を理解しようとせず、まずは一つの体験として彼の作品に触れてみることが、彼の音楽の世界への入り口になるかもしれません。



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